「伊織のお兄ちゃん、見てみたな」



私がそう言うと、伊織は笑った。



「兄ちゃんも、有岡に会ってみたいって言ってた」



え?


私が不思議そうに


「なんで私のこと知ってんの?」


と聞くと、伊織ははにかんで




「俺が、有岡の話を兄ちゃんによくするから。
 有岡の話、面白いからさ」




私は、ああ、なるほど。と小さくつぶやいて、
窓のほうに顔を向けた

この火照った顔を伊織に見られるのが
恥ずかしかったからだ


彼は何とも思わずにそう言ったのだろう。

でも私は、
彼が私の話をしてくれているということが
嬉しくてまらず、

ニヤける顔を抑えようと
唇を噛み締めた。