「ねぇ」
2人きりになった部屋で、末永は先に話しかけた。
「どう思う?」
「どうって」
「川橋さんだよ。・・・僕の勝ち、徐々に見えてきた気がしない?」
咲は黙ったまま、ただ笑うだけだった。
末永は、顔を隠すように片手で口を押えると、
しばらく窓の外を眺めていた。
目下に見えるメンスとの並木道は、夏の色を纏っている。
末永は口を押えていた手を離し、まっすぐ咲を見つめた。
そしてにっこり笑う。
誰に向けるよりも優しいそれを。
「どうやらゲームは動き出したみたいだね」
咲も嬉しそうに笑いながら、ゆっくりと首を縦に振った。