そんな末永先生を見ていると、


不意に、マスターに言われた言葉を思い出す。


「・・・あの、先生」


「ん?」


なぜだろう。


とても簡単に聞けることだし、特に意図も何もない。


だけど、


こんな単純な質問をすることが、私には少し躊躇われたし、


ちょっとドキドキした。


「・・・先生から見て、松本先生って、どんな人なんですか?」


私のその問いかけに、


先生はにっこり笑っていた。


「僕は、松本はとても“人間らしい”奴だと思うよ。良くも悪くも、ね」


「人間らしい?」


「うん。人間だけが持つ能力をいつもフルに使っているからね。


だからこそ、僕は松本と一緒にいるのが楽しいのだけど」


「・・・よく分からないです」


「確かに、分かりにくいかも。ただ、間違いなく言える事は、1つ。


松本がとても“魅力的”であるということだよ」


末永先生は、“魅力的”という言葉を強調した。


その言葉を聞いた途端、


内心、どこかでほっとしたような感覚があった。


理由は分からないけど。


「・・・ちょっと、トイレに行ってきます」


少し落ち着きたくて、私はすぐに先生の部屋を出て行った。