「・・・ふふっ」
先生がコーヒーを飲みながら、私を怪訝そうに見つめてくる。
きっと、私が笑ったことが気になるのだろう。
「なんでもありませんよ」
どうしてだろう。
何だか可笑しいし面白い。
もう少し、先生と話してみたい。
「先生」
「・・・」
先生は黙ったまま。
でも、その眼が少し私の方に動いたから、きっと私の言葉を聞いている。
「先生は、ここのクラブハウスサンドは食べたことありますか?」
「いや」
先生がカップをテーブルの上の皿の上に置いた。
静かな雰囲気の漂う店内だけど、会話を厭うような空気ではなかった。
「じゃあ、今度来てみたら食べてみてください。私にとっては美味しいので」
「約束はできない。その時食べたいと思えば食べる」
「じゃあ。その時はこのマルコポーロと一緒に頼んでみてください」
「なぜキミはそれを私に勧める?
店の店員であればともかく、キミが勧める必要はないだろう」
「確かに、その通りです。でも」
自分でもわかった。
私はきっと、笑顔になっている。
自然に、大きな笑顔を先生に向けている。
「自分の好きなものって、他の人にも勧めたくなるじゃありませんか」