初めて見た。


松本先生がメガネを掛けている姿。


黒い淵の四角いフレームのメガネから見つめられて、


私は不意にドキッとする。


どうしてメガネを掛けると、男の人って無条件でカッコよくなるんだろう。


永遠の謎をふと思い出しつつも、


それはあとで考えるとして、


私は先生に尋ねた。


「あの、松本先生はよくここでお昼を食べるのですか?」


「・・・まぁ。よく、ではないが」


先生が壁に賭けられた振り子時計に目を遣る。


時刻は午前11時30分。


お昼を食べるにはそう、早すぎない時間だ。


「・・・あの、もしよかったら、ここ、座っても良いですか?」


断られるだろうな、と思ってダメもとで聞いてみたのに、


答えはあっさり返ってきた。


「どうぞ」


先生が、組んでいた足を組み替えた。


そんな他愛のないしぐさが、やけに大人っぽかった。