「で、キミは少しは論理学をかじってきたのか?」
そして次の日。
朝1限、哲学基礎の教室は、授業開始10分前なのに誰もいなかった。
たった一人、本を読みながら、窓辺にたたずむ松本先生を除いては。
”おはよーございまーす”と小さな声で言うと、挨拶の代わりに、
そんな言葉が投げかけられる。
私は鞄を机の上において、仲からノートや筆記具を取り出しながら、
事実だけを述べた。
「いえ」
「・・・」
松本先生の表情は変わらない。
怒っているようにも見えないけど、喜んだり笑っていたりするようには見えない。
ただ、黙り込んでいるということは、
あまり良いリアクションではないことは事実なのだろう。
「昨日論理学の本を探しに図書館に行ったら、末永先生と鉢合わせしまして」
松本先生の眉が、ぴくり、と動く。
あ、ちょっと反応した。
「そしたら、末永先生が、
松本先生が論理学の良い本を持っているとおっしゃっていました」