「どうしたの?ここの書庫には哲学の本しかないよ」


にこにこ笑う末永先生は、目の前の本棚を指差していた。


「あ。実は、その、論理学で手ごろな本はないかなぁ、と。


できれば1日くらいでサクッと読める、そんな本を探しているんです」


「えー、そんな1日でサクッと読めるなんて」


もっともだ。


論理学なんて難しい学問を、


たった1日でサクッと読んでどうにかしようとする方が間違っているのかも。


でも、新書とかで○○入門とかあるくらいなのだから、


それくらいあってもおかしくはないような気がするけど。


末永先生は腕を組んで、うーん、と首をひねりながら唸っていた。


が、しかし。


「それってさ、例えば論理学というよりかは、


論理を、例えば論理的な文章とか、をサクッと学べる感じでいいのかな?」


「はい。そういうものを探しているんです」


私がそう答えると、


とたんに末永先生の顔がぱああと明るくなった。


「知ってるよ。そういう良い本」


「え、本当ですか!?」


「うん」


末永先生は私に少し近づくと、


そっと耳打ちした。


「松本に頼んでごらん。彼がその本を持っているよ」


と。




その後、静かな書庫に、私の変な声が響いたのは言うまでもない。