松本は怪訝そうに末永を見つめていた。


「今日は珍しく曖昧な事を言うのだな」


「そうかな?まぁ、確かに僕の論調らしくないかもしれないね」


末永はコーヒーを一口、口に含むと、カップを机の上の皿の上に置いた。


かちゃん、と食器と食器が触れ合う音が、


2人の耳に鮮明に聞こえた。


「キミは、今目の前に存在する”個人”そのものに興味をあまりもたない。


そうでしょう?」



「・・・」



「興味を持たないのか、持たないようにあえてしているのか。


そこは良く分からないけど、でも、とにかく僕は嬉しいよ」


「何がだ?」


「だから、僕だけではないんだってことだよ」


末永は満面の笑みを浮かべると、再び目の前のパソコンに視線を落とした。


松本は一旦自分の膝の上にあるパソコンに目を落としたが、


しばらくキーボードの上の手は止まったままだった。