顔を枕に埋めると感じる、心地よい圧迫感が私の心と体をほぐしてくれた。


本当に疲れた。


うん、とっても。


少しでも気を抜けば、すぐに眠ってしまうだろう。


私は枕元に置いた目覚まし時計を確認する。


デジタル画面には、午後7時と大きく表示されていた。


はー。


夕飯作らなきゃ。


でも面倒くさい。


そういえば昨日溜めた洗濯物を洗わなきゃ。


これも面倒くさい。


お風呂入らなきゃ。


・・・面倒くさいけど、入らなきゃ。


「よしっ」


多分、お風呂に入った後なら多少は動けるだろう。


私はとりあえずバスタブにお湯を溜めに上半身を起こした。









その瞬間。


なぜかふと。


コーヒーメーカーの前に立つ松本先生の姿を思い出した。


起き上がった時に台所が視界に入ったからだろうか。


私の部屋は、ありふれた1ルーム。


玄関から入って、すぐに左右に台所とお風呂とトイレがあって、


で、部屋が1室あるだけ。


「松本先生かぁ」


皮肉ばっかり言って、


インテリで嫌味で、


だけどコーヒーとか私のために淹れてくれて。


やっぱりなんだか、あの人は不思議だ。


私は、松本先生の傍にいると必ず香る、


あの甘くてそしてどこか凛として鋭い香りを思い出しながら、


お風呂へと歩いた。