苦くて甘い。
だけど深くて、まろやかで、コクがある。
コーヒーを口にすると、そんな風味が一気に広がっていく。
そこら辺のお店ではあまり飲まない、そんな味だった。
「キミこそ、僕にとっては不思議な人間だけどね」
微笑を浮かべながら、先生はコーヒーを再び手に取る。
「え、私が?どこがです?そんな風に言われるの初めてですけど」
「僕だって”不思議”と言われたのは初めてだ」
「あ、別に悪い意味じゃないですから」
「そう。じゃあ、どういう意味で不思議なのかな。説明してみて。
キミはどうも抽象的な説明が多いようだから」
う。
まただよ。
これじゃあ授業の二の舞になってしまう。
「えーっと」
先生が笑う。
でも、今度はさっきとは違う笑い。
少し意地悪そうで、でもどこかわくわくしているような、そんな笑い。
「その・・・」
上手く言えない。
難しい。
でも、不思議な人だと、率直にそう思った。
別に貶しているわけではない。
確かに、皮肉を言われるのはすごく嫌で、
それに対しては一言くらい文句を言っても良い思うし、
そういう点で先生は”変”かもしれない。
けど。