私は何を喋って良いのかずっと悩んでいたけど、


どうしてだろう。


この時自然に、口から言葉が零れ落ちた。


「先生って、なんだか不思議な人ですね」


「・・・不思議?」


松本先生は、飲んでいたコーヒーのカップをテーブルの上に戻す。


「はい。何だろう。・・・説明が難しいのですけど、なんだか、不思議です」


「”不思議”ねぇ」


ふっと先生が小さく笑った。


教室で見せる無表情な顔とは違って、


何かを、――それはとても曖昧で抽象的な――考えながら、


それに対して笑っている。


そんなような表情を浮かべる先生を見て、


しみじみと思う。


あぁ。


ほらやっぱり。


先生はとても”不思議”な人だ。