妙な汗が体から吹き出そうになる感覚を覚えそうになった瞬間、


不意に、目の前の先生の口が開いた。


「・・・コーヒー、飲みます?」


え、あ。


何だろう。


普通の会話文なのに、何故か私はびっくりしていた。


「え?あ、でも、ここ末永先生の部屋・・・」


「末永はそれくらいでは怒らない。


それに、ここのコーヒーの半分は、私が購入している」


「あ、そうなんですか」


「で、どうするの」


「じゃ、じゃあ、いただきます」


私の返事も待たずに、先生は立ち上がり、


部屋の中にあるコーヒーメーカーのところで、


2人分のコーヒーを注いでいる。


普通の光景と言えば光景なのだけど、


何故かそれは非日常的な風景にも思えた。




いや、非日常的でしょう。


だって。


特段仲が良い訳ではない哲学科の准教授の部屋で。


嫌いな講師が、その部屋の主のコーヒーメーカーでコーヒーを作って、


私に差し出してくる。





こんなこと、15分前には想像すらしていなかった。