「え?」
私が目を丸くしていると、先生は中に入るように、と手招きをしてきた。
私はドアを閉め、中に入る。
すると、先生はパソコンのマウスを左手で操作しつつ、画面を眺めながら言った。
「”急用が入ってしまって本日は行けません。すみませんでした”・・・だそうだよ」
「え、急用?」
「らしいね」
末永先生はずず、とコーヒーをすすりながら、再びマウスを操作している。
(じゃあ私って、・・・何のためにここにいるんだ?)
私が末永先生に会っているのは、まさしく咲のためである。
咲が来れない以上、私はいても意味がない。
でも、何て言えば良いのだろう。
だって、
末永先生に会う口実は。
「哲学に興味があります」なのだから!!
アガペーとか。
フィーリアとか。
ストルゲーとか、
エロスとか。
ぶっちゃけ何だって構わない。
困惑しつつも、一生懸命頭の中で、
この部屋から退散する口実を考え込んでいた時だった。