エレベーターから降りると、しんと静まり返った廊下が伸びている。


私はフロアの地図を確認して、末永先生の部屋を探す。


「えっと、ここだ」


昨日来たばかりだけど、念のために確認してから、


先生の部屋の前まで、歩いた。


廊下はカーペットになっているから、ヒールでも足音が響かない。


それがこの静けさを生み出している要因なのかもしれない。


エレベーターを降りて右に曲がり、少し歩いたところに末永先生の部屋はある。


私はドアの前に立つと、そっと耳を澄ませて中をうかがったが。


「・・・?」


誰の話声も聞こえない。


一応ドアには「在室」とのプレートが掲げられているし、


電気も点いているようだから、おそらく先生はいるのだろう。


ためしにドアをノックしてみた。


すると。


「どうぞー」


明るくて感じの良い末永先生の返事。


私はゆっくりとドアノブを回して、ドアを開けた。


「あぁ、来たんだね」


先生の部屋のドアを開けた瞬間、香ばしくて甘いコーヒーの香りが漂ってきた。


「あれ、先生。咲、・・・じゃなかった、武藤さんは?」


末永先生は、右手にマグカップを持ちながら、首をかしげた。


「あれ、キミの方には連絡が来ていないのかな」