「感情とは。少々省略しますが・・・。


”人が生きる上で、必要なものだと考えます。感情があるからこそ人間であり、


感情があるからこそ考えたり行動したり、


また様々な法律や仕組みが出来上がったりするものだと思います。


感情こそが、人間社会の全ての基盤だと思います”・・・」


頬杖をしながらぼうっと聞いていたけど、


そこまで聞いて、私は我に返る。


その文章、知っている。


いや、知っているも何も。


それを書いたのは他ならぬ。


「”感情を抱くことはくだらないという人もいます。


でも、感情があって、それについて考えるから、


私たち人間は進歩したのではないでしょうか”」



先生はそこまで読むと、ゆっくりと顔をあげた。


そして、その大きな瞳を、私の瞳に合わせてくる。


「川橋さん」


「・・・はい」


右手を顔から離したが、私の視線は宙を彷徨っていた。