2分後。


「始めましょう」


ぼんやりと前を向いていると、松本先生の低い声が聞こえた。


当り前なのに、自分の意識がぼんやりしていたせいか、


少しだけその声に驚く。


ぱち、と目を開いて先生の方を見ると、


先生とばっちり目が合ってしまった。


(・・・うわっ)


不意に、どきっと胸が鳴るのが分かった。


何故かその瞬間に緊張して、体がこわばり、あからさまに目をそらしてしまった。


(な、なんでだろう)


落ち着こうと思って息を深く吸い込む。


はぁ、と吐き出せば、少しだけ、緊張が解けたような気がした。



・・・が。


「川橋さん」


「・・・へ、あ、はい」


突然私の名前が呼ばれた。


「君は、愛には種類があるというのを知っていますか」


「・・・え、は、はい・・・」


先生は、その大きな眼を私に向けて、尋ねてきた。


4人の視線が、一気に私に向かっている。


「それでは、・・・ためしにキリスト教上の愛の種類を言ってください」


「え、・・・あ、はい」


私は、自分の頭の中に会った、過去の記憶を呼び起こした。