突然話を振られた彼が、少し怪訝そうな顔をした。


「そう、君のドクターをとった時の論文とか、僕はとても面白く感じたよ」


「・・・ふん」


興味なさそうに鼻で笑う松本先生。


あぁ、やっぱり感じ悪い。


どうしてこうも高飛車で意地悪そうな感じなのだろう。


「で、君の研究分野は?」


それでも、末永先生は、


にこにこと穏やかな笑顔を絶やすことなく、


松本先生に笑いかける。


一方の松本先生は、にこりともせずに、


右手に抱えている分厚い本の表紙を開けては閉め、開けては閉めながら、


私たちに顔を向けた。


「中世ヨーロッパにおける悪魔学についてだ」


「・・・悪魔学?」


「簡単な例だと、魔女狩りなどについて研究し、


その当時における人間の考え方や・・・」


末長先生が横で代わりに説明してくれた。


「まぁ、君たちは興味が無いだろうけど、ね」


松本先生は末永先生の説明を遮るようにそう言うと、


そのまま部屋を出て行ってしまった。


少し気まずい空気が流れてはいたものの、


その態度に感じた怒りの方が、若干勝ってしまった。


ドアがパタン、としまった瞬間、私は末永先生に尋ねた。


「・・・松本先生って、いつもあんな感じなんですか?」


明らかに棘のある声だった。