「あぁ、大丈夫。松本もここで一緒に昼ご飯を食べよう。ね、良いよね?」


なんで。


どうして。


さっきから、私の頭の中は、その2言しか浮かんでいない。


「良いよね、武藤さん、川橋さん」


拒否権など、初めから私たちにある訳が無い。


押しかけているのは、私たちなのだから。


咲は、俯きながら小さく「はい」と返事をしている。


私は、返事をする代わりに、末長先生に質問をした。


「・・・どうして松本先生が、末長先生の部屋にいるのですか?」


「あぁ。色々私の部屋の備品を使わせてあげているからだよ。パソコンとか。


それに、彼とはよく議論したり、論文の相談に乗ってもらったりするから」


松本先生は、一切こっちを見ないで、


テーブルの上のコーヒーらしき飲み物をすすっている。


普通、例え押しかけた客でも、


先生なら、にこり、と笑うぐらいしても良いのに。


何だか無性に腹立つ人である。


「じゃあ、席用意しないと」


末長先生は立ち上がり、部屋の隅に会った椅子を、


部屋の真ん中にあるラウンドテーブルの周りに置いた。


末長先生の席の隣に、松本先生が席を変えた。


余っているのは、末長先生の隣か、松本先生の隣。


・・・今日の来訪の本来の趣旨は、


咲と、末長先生を仲良くさせるためだ。


今日ばかりは、自己を犠牲にしないといけない。


「ありがとうございます」


私は自ら、松本先生の隣に座った。