「失礼します!」


私の威勢の良い声が、廊下中に響き渡る。


少しの間を置いて、中から「どうぞ」と聞こえてきた。


「ほら、行くよ、咲」


緊張する咲に、そう囁いて、私は勢いよくドアを開ける。


「いらっしゃい、武藤さん、川橋さん」


朗らかな笑顔を浮かべる、末長先生。


・・・と?


あれ?


末長先生と、末長先生の机の前に置かれたテーブル席に座って、


向かい合っている先客が、そこにはいた。


その人が、振り向いてちらり、と私の方に目を遣る。


まっ白なシャツを着た、広い背中が良く見えた。


「私はどうやら邪魔者になるようだね」


目の前のその人は、そう言い捨てるようにして立ち上がろうとする。


低く、安定した音程。


聞き覚えのある、一瞬だけ聞き惚れてしまいそうになるその声に、


私は耳を疑った。









まさか。