「もう、どうしてあんなこと言うの!?」
末長先生と別れて、私たちも帰路へと着いていた。
咲も私も、近所に住んでいる。
というか、同じ学生アパートで、部屋が隣同士である。
そこで仲良くなった咲とは、四六時中一緒、と言うわけだ。
「いいじゃん。だって咲、あんまり恋愛に興味無いのかと思って」
「そ、・・・別に人の勝手でしょ!」
咲は可愛い。
大きくてくりくりした瞳に、綺麗な黒い髪。
笑うと白い歯が眩しい。
彼女が歩けば、周囲の人間はみな、その美しさに驚いて、確実に振り返る。
いわゆる美少女、というやつだ。
隣にいる私なんて、恐らく周囲から見れば、引き立て役に見えるだろう。
まぁ、咲はそういう打算的な子ではないから、一緒にいる訳なんだけど。
とまぁ、その容姿故、クラスの男の子、部活の男の子には、モテるのなんの。
大体私に近づいてくる男どもも、皆、蓋を開けてみれば咲狙い。
それなのに、咲は見向きもしなかった。
だから、ずっと私にはそれが不思議だった。
男嫌いなのかなぁ、と勝手に思ってたし、
「好きな人がいるの?」と尋ねても、「いない」の一点張りだったし。
だから、今咲に好きな人がいるという事実を聞いて、
嬉しく感じたし、ちょっと安心もした。
「いいじゃん?好きならちょっとぐらい末永先生にアタックしたって」
「・・・佳子は、良いよね。そう、明るくって、凄く積極的で」
「そうかなぁ。私は、・・・好きっていう感情に素直なだけだけど」
「だから、それが難しいんだって」