「ねぇ、お願い。ヒントだけで良いから!」
腕にすがってねだる私に根負けしたのか、
咲は苦笑しながら、渋々答えてくれた。
「じゃあ、1つだけ」
咲は何かを考えているのか、二つの瞳を左右に動かした後、
その焦点を私に真っ直ぐ向けた。
「愛って見分けるのが難しいんだと思うの。
いろんな感情に何層にも包まれていて、何が愛なのか、それはなかなか見えない。
だけど、それらすべてを取り除いた時に見えてきたもの。
・・・私は確信したよ。・・・愛って凄いなって」
えへへ、と恥ずかしそうに笑う咲。
自己主張が少ない彼女が雄弁に語るその姿は、
その何重もの層を取り外した証そのもの。
私にはまだ見えていないものを、しっかりその眼で確かめている。
「そうか。・・・そうなんだ」
私にも、見える日が来るのだろうか。
その凄い“愛”というものが、見えるその日が。