きょとんとした顔をしながら、咲は私を見つめていた。


「・・・どうしたの?」


「いや、あの、ちょっと、ほら、なんかいいなって」


ぶわっと鼻の頭に汗が浮かぶ。


どうしよう、私、今すごく変なこと聞いてる。


「・・・私の場合、てことだよね?」


咲の顔が緩まって、口角が上がった。


「そうそう。人それぞれ違うかとか、ほら、最近哲学とかやってて、


愛とかそういう人間の抱く感情について」


早口でまくしたてる私を見て咲は笑った。


「いいよ。ふふ」


「・・・」


あまりに恥ずかしくて、咲を直視できなかった。


少し黙っていると、咲は静かに口を開いた。


「・・・先生と一緒にいるといろんな感情を抱くよ。


すごく居心地が良かったり、凄く不安だったり。


時々嫌いに感じるときもある」


ふっと咲は幸せそうな表情を浮かべて、


私の二つの目を覗くかのようにまっすぐ見つめた。


「でも、根底にあるのは、愛だよ」


「・・・愛?」


予想外の言葉に、私は驚いてその言葉だけを反復してしまった。


「うん、愛。だから、きっと私は、・・・」


彼女はそこまで言うと、微笑みながら口を噤んでしまった。


「ん?どうしたの?」


「ダメ、これ以上言ったら、佳子のお楽しみを奪うことになっちゃう」


「は?」