アパートに到着すると、
少し空が赤くなり始めていた。
「ねぇ」
「ん?」
郵便ポストを確認している咲に声をかける。
「先生のこと、好きなんでしょ?」
私のその言葉に、咲はその手を止めた。
そしてゆっくり顔をあげて、私の方に向き直る。
「うん。大好きだよ」
「・・・あのさ」
いつも躊躇なんかしない私だけど、
なぜかこの時ばかりは躊躇してしまった。
すごく気恥ずかしい。
今まで、私の方が上目線で語っていたことを、
あまりに初歩的な質問を投げかけるからだ。
柄にもなく緊張する自分に落ち着けと言い聞かせて、
私は思い切って口にする。
「好きって・・・どんな感じ?」
私の声が、アパートのホールに響いた。