店を出るとき、


「嫌な思いさせちゃったから」と言って、


末永先生が全部奢ってくれた。


咲にとってみればいつものことなのだろうけど。


「それじゃあ、僕はちょっと大学寄って帰るから、


2人は帰りなさい」


咲が少しさみしそうに末永を見つめている。


それに気が付いた末永先生が、ぽん、と軽く咲の頭に手を載せた。


たったそれだけのことだけど、


それはとても暖かい光景だった。


2人の想いが確実にそこにあるというのが、私にまで伝わってきた。


「いいんですか?なんなら私が咲を独り占めしちゃいますよ?」


末永先生はあはは、と大きく口をあけて笑う。


「あぁ。それは困る」


「彼女の友人という存在は最強なんですから」


わざとらしく大声でそう言うと、先生は頷いて、


そして笑った。


「参ったね。それなら僕は勇者として咲をさらいに行かないと」


だけど、そこで見せる笑顔はとても余裕だ。


「ダサいですよ、そんなセリフ。それじゃあ」


私はそう言い捨てて、少し名残惜しそうに後ろを振り向く咲の手を引っ張って、


家路へと着いた。