エリーゼのお店の前で、ドアノブに手を掛けた。


力を入れて、ドアを押そうとしたけど。


「松本先生」


何も言わずにそのままその場を去ろうとする先生を呼び止める。


先生は立ち止まって、私の方を振り向いた。


「ありがとうございます」


「礼を言われることは何も」


「先生は、末永先生が咲と付き合っていること、知ってました?」


先生は少し黙った後。


「・・・うすうすは」


と静かに答える。


「先生は、気になりませんか?」


「自由であるべきことに他人が口をはさむことではない」


先生はそう言い捨てると、そのままさっさと足早に歩き去って行った。