突然降ってきた声に、


反射的に2人して反応した。


咲の後ろに立っていたのは、


「・・・!す、末長センセ・・・」


あまりに突然現れたそのタイミングに、


図ったものではないか、とさえ疑いそうになる。


「こんにちは。ここ、空いてますか?」


両手で持っていたお盆を、既に咲の隣の席に置きながら、そう尋ねる。


それじゃあ、断れるはずもない。


まぁ、当の咲本人は、断るどころか、


顔を真っ赤にさせて、首を縦に何度も振っているけど。


「咲さんのお友達ですか?」


斜め前に腰かけてきた、末長先生が、そう尋ねてきた。


「はい。咲の友達の、川橋です」


「川橋さんですね。僕は末長です」


「知ってます」


「もしかして、僕の授業、履修したことがあるのかな?」


「いえ、咲がよく話してくれるんで」


咲が驚いてこっちを見ているのが分かる。


ふん、教えてくれなかった仕返しよ。


「そうですか、何て僕は言われているのかな」


その人が浮かべる穏やかな笑顔は、相手の警戒心を解きほぐす印象を与える。


何となく、納得できる。


咲が好きなのも。


それに、確信する。


女子に人気なのも。


「そうですねー、・・・」


ちらり、と横目で咲を見た。


少し俯き加減だが、明らかにその目線は私に向かって、


「余計な事を言うな」と釘を刺してきているのが分かった。