あー、ダメダメ。
我に返って、手の甲で目を抑えた。
涙がこぼれないように、ぐ、と飲み込むように、力を喉に込めた。
すると、一瞬だけ、前が暗くなって見えなくなる。
こんな風に誰もいない、暗い道が続いてくれれば、
少しは落ち着くのかな。
だけど、私は足を止めない。
暗くなったのは、一瞬だったから。
手の甲を離して、顔を上げる。
ぐす、と鼻が鳴る。
不意に、足が止まった。
どうして。
ここにいるんだろう。
「・・・キミは、またもやまっすぐ前を向いて歩かない。なぜだ」
安定した、落ち着く低い声が、
私の耳元に落とされた。