「咲!?」
私が思わず大声で叫んだせいで、2人が私に気が付いた。
2人とも呆然とするように私を見つめている。
ばっちり咲と目が合う。
困惑と驚愕、それらが交じり合った目の色を、彼女はしていた。
どうして良いか分からず、しばらくその場で、私は石のように固まっていた。
「・・・ごめん、ずっと黙ってて」
「どうして言ってくれなかったの」
2人が私の席まで来て、説明してくれた。
2人が付き合っていることを。
「・・・別に、佳子を信用してなかった訳じゃないの」
咲の述べた理由はこうだ。
1年生の時に末永先生を好きになって、
付き合いだしたのは1年前。
だが、同じ大学の准教授と学生が付き合っているという噂が立つことは、
お互いに良くないということで、
誰にも秘密にしていたらしい。
――私にすらも。
「ただ、友達でも、1人でもしゃべってしまえば・・・」
咲の言いたいことは分かった。
近しい人にすらも秘密にしなければならないってことも、頭では理解できた。
でも。
それでも。
「なんか・・・バカみたいじゃん、私」
「なんで」
「だって、1人で舞い上がって、末永先生のところに遊びに行こうとか、
・・・する必要なかったんでしょ?」
「いや、そんな」
「本当、1人でバカみたいだよね、私」