「いらっしゃい」


ゴールデンウィークのせいか、


店内はいつもよりガラガラ。


「あれー、どうしたの?」


マスターがにこにこしながら尋ねてきた。


「今日授業があるからって来たので、


せっかくだからクラブサンドでも食べていこうかと」


「それは嬉しいね。好きなところに座っていいよ」


私は頷いて、この前松本先生と一緒に食べた席へと向かう。


店内は少し薄暗いのだけど、


ここの席だけ、太陽の日差しがよくあたるから、ぽかぽかしていて、


明るい雰囲気がある。


今日は先生が座っていたソファに座る。


あら、ここの席は、飾られている大きな観葉植物のおかげで、


他の席より少し見えにくい場所なんだ。


「いつものでいい?」


「はい」


「サンドイッチと一緒にする?」


「はい」


マスターはそれだけ聞いて、


カウンターへと戻る。


甘い香りの漂う紅茶が注がれるのを待つ間、


“論理学トレーニング”でも読もう。


そう思って、鞄の中から本を取り出した。


――帰り際、松本先生が『持って帰るのが面倒くさい』ということで、


手渡された新品を。