確かに、私が手にした本は洋書だった。


だけど。


分厚いと思っていた本は、実はそれ1冊だけではなく。


「これ・・・」


その背表紙には見覚えがある。


私は、洋書の下に積まれていた本を手に取ってみた。


2冊、同じ背表紙。


「“論理学トレーニング”だ」


あれ、私、確か先生にメールはしていないはずなのに。


どうして。


「キミは熱心な学生ではないと思っていたので、


おそらく忘れているのかもしれない、と考えたからだ」


「せ、先生!」


先生は腕を組んで、元座っていたソファに腰かけた。


「しかし、どうやらキミは私の本を読んだようだね」


「え」


「さっき議論した印象では、以前よりまだまともに論理が組み立てられていた。

また、以前より接続詞を大切にしている印象を受けた」


そうだ。


先生は第1章で、接続詞について書かれていた。


そこには、


“接続詞は論理の基本中の基本であり、最も重要な部分”と述べられていた。


さすが先生。


やっぱりプロなんだなぁ、と実感する。


「本は借りたのか?」


「いえ、買いました」


コーヒーを口まで運ぼうとする手が止まり、先生が私をまじまじと見つめる。


「なぜ?」


「勉強しようと思ったからです」