部屋に戻って、膨れたお腹をさすりながら、


私はベッドの上に横たわる。


じっと天井を見つめていると、ふと、鞄の中に入れている買ったばかりの本を思い出す。


「あー。そうだ」


膨れた胃を抱えるお腹だけでは起き上がることが出来ず、


両手で支えながらなんとか起き上がると、


私は鞄の中から“論理学トレーニング”を取り出した。


それを手に持ったまま、ベッドに再び横たわる。


表紙はとってもシンプルで、


白地に黒い文字で“論理学トレーニング”と書かれているだけ。


“松本英人”


私は本を顔の上に掲げながら、片手をその名前の上にそっと重ねる。


そして、少しだけその文字を人差し指でなぞった。


私、何をしているのだろう。


満腹ゆえの眠気でぼんやりした頭は、私の思考を鈍くさせる。


「・・・せんせ・・・」


その日の記憶は、そこで終わっていた。