「いただきます!」
ほかほかのご飯に、熱々のビーフシチュー。
昼間は汗ばむくらいに暑いけど、
まだ肌寒い夜にはこういう食事も良い。
「美味しいなぁ。咲の料理」
「おだててもダメだよ〜」
そう呟きながらニコニコ笑う彼女は、台所でコーヒーを淹れている。
そういえば、咲はコーヒーが好きだった。
「あのさ、咲って」
ふうふうと、スプーンに乗せたシチューを冷ましながら、
台所に立つ咲に尋ねた。
「なに?」
エプロンをする後ろ姿は、
いわゆる理想の新婚生活に出てくるお嫁さんみたい。
とまぁ、私が見惚れている場合じゃなくて。
「人参キライ?」