「・・・どうしたの?」
まるで知られたくない何かを知られてしまったような、
そんな困惑した感じだった。
親友に隠し事をされていると思うと、
――もちろん、誰にだって秘密があるとは思うけど――
やはり寂しくて、思わずそんな疑問が口から飛び出てしまった。
「あ、えーっとね」
泳ぐような視線。
眉毛が下がり気味。
あぁ、やっぱり何か、多分私にあまり知られたくない何かを隠しているときに、
私に会ってしまったのだろう。
「母親が来てたの」
さっと彼女が右手をあげる。
彼女の右手には、スーパーか何かのレジ袋が握られていた。
「なんか、ご飯作ったからって」
そのビニール袋には、大きめのタッパーが入っている。
「それでね、佳子も要るかなって思って」
「中身は?」
「ビーフシチュー」
あぁ、美味しそう。
でも、きっとこの寂しさは、そのビーフシチューでは紛らわせられない。
「いや、だいじょ」
――グルルルル――
「・・・うぶじゃないです」
何だろう、このべたな展開。
あまりに恥ずかしくて、私は思わず俯いてしまった。
「いいよ、いいよ。何ならうちで食べていく?ご飯炊き立てだから」
咲の言葉に甘えて、私はそのまま咲の部屋へあがる事になった。