結局、買ってしまった。
読んでいて、自分のあまりに日本語ができないことに愕然とし、
また、その内容も面白くて分かり易かったから、
ついつい購入してしまったのである。
(うーん、ま、いっか)
本はあまり読まないし、ファッション誌なんて立ち読みするくらいだし、
こういった類の本なんて、
就職試験用に買ったことはあったけど、
こういう論理学に純化した本は初めてだった。
(飽きないで読めるかな)
一抹の不安を覚えつつも、
松本先生に吹っかけられた課題をこなす必要があると考えれば、
なんとかこなせるかもしれない。
一応ゴールデンウィークは実家帰るから、
帰る途中の新幹線で読めば良いかも。
そんなことを考えながらアパートの入り口にたどり着くと、
一足先に歩いている咲がいた。
「咲!」
私が叫ぶと、咲が足を止めた。
「あ、佳子」
振り向いた咲。
いつもと、・・・いや、気のせいかな。
一瞬だけ困ったような顔をした。
何故だろう。
話しかけたこのタイミングは、あまり良くなかったのだろうか。