帰宅途中、アパートの近くの本屋に立ち寄った。
新刊のコーナーでいろいろ探してみると、
結構数多く積まれている。
「・・・なんか、すごいな」
“論理学トレーニング”
図書館では借りられていて、返却予定日は再来週だった。
来週はゴールデンウィークが始まるけど、
なぜか松本先生の授業がある日は平日で、
休講にはなっていない。
だからこそ、今週中には読まなければならないのだ。
それにしても、
私は、その本を持ったまま表紙に書かれた著者の名前を確認する。
(松本先生、自分が書いた本だって教えてくれれば良いのに)
私はそれを手に取って、ページをめくってみた。
1ページずつめくるたびに、
新しい本特有の香りと、紙のパリッとした固さが伝わってくる。
試しに第1章を読んでみた。
「・・・接続詞の使い方かぁ」
そこには、
――松本先生の事だから難しい言葉で書いてあるかと思ったけど――
誰が読んでも理解できるように、平易な言葉で書かれてある。
少なくとも、この文章を読んで、
普段の松本先生を想像できる人はきっといないだろう。
不意に、末永先生の言葉を思い出す。
(先生って、・・・本当はどういう人なのかなぁ)
そんなことを思いながら、私はその場で立ち読みをしていた。