「私の名前は、松本栄人。私は、T大学を首席で卒業後、
特待生として、アメリカにある、H大学に留学し・・・」
皆が、ポカーンと口を開けていた。
自己紹介と称して、彼は自分の学歴を紹介し出したのだ。
確かに、・・・凄い学歴だ。
日本で1番の大学に入学し、首席で卒業、アメリカのこれまた1番のH大学に、
特待生として留学。
卒業後は、政府機構の通訳の仕事、国際機関での仕事、学会での論文・・・。
・・・え、自慢、だよね??
突然、この人、自分の自慢し始めたんですけど。
「・・・英語以外にも、ドイツ語、フランス語は当然たしなんではいます。
4年制の大学に言っている学生であれば、当然ですかね」
うわぁ。
やっぱりそうだ。
この声。
そして、咲が言っていた、容姿。
そして、この「皮肉」
この人だ。
「私に関してはここまで。それでは、早速授業を始めます」
そして、いきなり配られた大きな1枚の紙。
何も書かれていない、白紙の紙だった。
「それでは、これから皆さんに、『感情』について、思うことを書いてみてください」
私は、耳を疑った。
「好きに書いて良い。
感情について、何でも良いから、思うことを書きなさい。
もっとも、きちんと自分で論点を設定するのは当然だが」
辺りを見ると、新入生たちは、目が点、と言うような状態で、
白紙の紙を眺めている。
隣の龍司君も、そうだった。
しかし、書かなければ単位はもらえない。
私は大急ぎでペンを握り、とりあえず何かを書いてみるのだった。