「幸大、私はあれが欲しいぞ。」
風牙が指差す。

「…水笛かよ。

って言うか自分で買えよ。」


「もう一度言うが、私はあれが欲しいぞ。」


「どれが良いんだ?」

「この竹で出来たのが良い。」


「これ、いくらだ?」

「600円です。」



「ほら。」


「うむ。大切にするぞ。」


「幸大さん、私はあれがいいです。」

叶が露店を指差す。

「たこ焼きか。

しゃーねぇな。」

たこ焼きを買う。


「ありがとうございます。

では、お礼を込めまして

あーん。」

そう言いながらたこ焼きを幸大の口に持っていく。

「ぜってーやらねぇ。」

口を閉じる。


「ならば、口につながる鼻か、目か、それとも、耳から、どれが良いですか?

それとも、全部ですか?」

「拷問かよ!」

「あーん。」

「…、あ。」

口を開ける。

「まぁ、良いでしょう。」

たこ焼きを口に入れられる。

「まぁ、上手いな。」

「ふふふ。

これで、幸大さんと間接キスですね。」


周りの空気が凍る。

「いや、待て、叶はそうかも知れないが、俺は最初に食べたから俺としてはノーカウントだ。」


「それは遠回しに私とキスしたいといことですか?」


「せっかく空気をもとに戻そうとしてんのにややこしくするなよ。」