「………な……そんな」

晋作の目は焦点が定まっていない。

(……相当梓ちゃんの事が心配みたいね……。
本人は気づいてないみたいだけど、明らかに……


梓ちゃんに好意を持っているわよね)

とりあえず晋作を落ち着かせようと思った松原は

「梓ちゃんは今のところ無事みたいよ。だけど、一刻の猶予も無いって事も事実。
だから早く梓ちゃんを助けに行くわよ。
あなたがそんな所で膝をついてる暇はないの」

と、冷たく言った。

晋作はハッとすると、そうだな……と言って立ち上がった。

「じゃあ松原はむこうの部屋を探してくれ!
俺はここら辺の部屋を手当たり次第探す!」

晋作はいつもの冷静な男になっていた。

しかし二人が別れようとした時、何かが目の前をビュンッと通った。