そしてさよならの時が来た。無事に名前は見付けられたし、僕はいつまでもここにはいられない。
「ウヒ…ワシは、死ぬ前にもう一度だけでも息子の名前を呼びたかったですよ。こうして念願叶ったのはあんたのお陰じゃ。本当に感謝しているですよ」
僕は少し照れた。これほど誰かに感謝されたことは、これまでの人生ではなかったから。
「一度だけじゃなく」僕は言った。「何度でも名前を呼んであげて下さい。素敵な名前じゃないですか。ねぇ、パーシー」
パーシーは大きく跳びはねた。「ウヒョ! うんっ! オイラはパーシーだい!」
僕は小さく深呼吸をする。
「それじゃあ、僕は行きます。これからも二人で仲良く暮らしてください」
父親ハムスターは頷き、部屋の奥へと下がって行く。パーシーがまた肩に飛び乗る。
「ウヒョ! オイラ、とうちゃんも大好きだけどあんたのことも大好きだよ。坊や、なんて呼んでごめんよ」
「いいんだよ、僕には名前がないんだ。君のその素晴らしい名前がうらやましいよ」