玄関の扉は小さな音ひとつ立てずに開いていく。その奥に見えるのは闇だけだ。まるで闇が扉を食い始めているようだ。
僕は弟とおばあちゃんのことを思った。今すぐ彼等に知らせるべきじゃないかと、思った。しかし体はそんな思いなどお構いなしに、玄関の扉に向いて動きはしなかった。