父親ハムスターはその弱った体でふらふらしながらも、何度も見たであろう場所をじっくりと眺めていた。僕の言葉に5秒遅れで反応する。
「ウヒ…それは本当ですかのう。ワシには信じられないですよ」
つまり、彼の頼みはこうだ。
一番大切なものを失くしてしまった。それを見つけ出してほしい。
しかし、それがどんな類いのものなのかはなぜか秘密で、仕方がないのでとりあえず僕は「大切っぽいもの」を探してみた。が、ハムスターなら何倍もかかるであろう詮索をすぐに終わらせることができたものの、大切っぽいものは何ひとつ無かった。どれもガラクタのようなものばかりだ。まさか、ヒマワリの種の食べかすではあるまい。