僕はいくらか落ち着きを持ち始めていた。いまさら焦ったってどうにもならないのだ。賽は投げられた。
「そうだ、坊や。君のサイコロはとっくに投げられている。君の意識とは違うところで。そうだろ?」
黒い大きな犬は僕を見る。僕はその目に怯える。
「はい」
フン、と彼は鼻で笑う。僕は強くなる。ほんの少しだけ。
「どこへ行くんですか?」
彼が素早く顔を上げる。僕はドキッとするけれど、目を反らさない。