窓の外を見ようとしたけれど、それは無駄なことだった。何から何まで黒で埋め尽くされている。僕は目を閉じる。だけど体は、さっきまでいたあの家から確実に離れていっていることだけは判る。
「お前はこれから、遠くへと行くんだ。ずっとずっと遠くまでな」
彼の声が僕の奥まで入り込む。車は徐々に、スピードを上げる。