車は本当に広く大きくて、僕は前方を見据えるけれど運転手の体格は判らない。むしろ、運転手なんているのかどうかすら判らない。
「運転手なんて気にするなよ。坊や、お前にはたくさん気にするべきことがあるんだ。だからこそ、気にするんじゃない。無い頭使ったって勿体ないだけだぜ?」
気にするべきこと? だからこそ、気にしない? 僕にはさっぱり意味が判らなかった。黒い大きな犬はそれだけ僕に言うと、シートに深く横たわった。彼は疲れているようだった。
僕も恐らくは疲れていたけれど、当然まだ体は興奮の中に浸っていた。