もう冷たい風はすっかり吹かない。水滴も落ちない。傷も痛まない。僕が今感じているのは、僕とユウタの声だけだ。だけどそこには命がある。
「坊や…」ユウタの声が寂しそうに変わる。「君を傷付けたくないんだ」
「だけど僕は…」
その時、足元がぐらりと揺れる。大きな音が洞窟の奥から響く。僕は倒れないように壁に手をつく。