僕は慟哭の中でで教会のイエスを
思い出していた
イバラの冠
裏切りと過酷な運命
そして磔の十字架
すべての罪を僕らの替わりに
背負ったと神父は言った
だけど僕にはあの十字架の
血を流したイエスの姿が
どうしても兄そのものに見えて
ならなかった
僕は一度として
犠牲なんか感じたことはない
僕は愛された
僕は
ただ愛された
だけど兄こそが犠牲と血の中にいた
兄を僕に返してくれたのは
悪魔じゃない
僕は天に祈ったんだ
血を吐くように歌ったんだ
もしこの世に神がいるのなら
僕の兄を僕に返してくれと
その祈りを叶えてくれたのは
神
そう
それは神だ
あの光…あの…光
僕に見せてくれた
天の光
兄を照らしていた
あの
光
僕は顔を挙げた
兄の瞳を見つめる
僕は兄に問いかけた
「宇宙に背くつもり?」
その僕の声は
その時僕の頭上から響き
語られたかのようだった
兄は目を閉じた
「宇宙は完全だ…だから俺は
お前を解き放つんだ」
僕は兄に言った
「兄貴…決めるのは宇宙だ
僕でも…兄貴でも…ない
もし…宇宙の完全性ではなく
それが罪と罰による答えならば」
僕の声はもう
僕のものではなかった
「それが悪魔の業だ」