「まだ全てを許せるわけじゃない

それでも俺は…ようやくあいつの

死を静かに見守ってやれる…

俺があいつを死に追いやったという

罪悪感は少しマシになった…

人は自分のした報いというものが

あるんだと…あの時親父は言った

ここで死ぬのは当然だと」

泣きながら僕はあの日以来兄が

閉ざした心を開いた理由が

わかったような気がした

「そして俺も…罪に報いなければ

ならない」

兄はシンクをつかんだ僕の片手を

そっと取り外した

「お前を解き放つんだ…俺から」

兄は僕に微笑んだ

「俺はこの部屋で死を望んだ

親父への憎しみと絶望…お前から

奪った人生の報いとして…俺は

それを決めたはずだったのに

あの日…クリスマスの日お前に

逢いに行ってしまった…俺が

家に帰って起こした発作は

お前を抱かないようにするための

無意識の抵抗だったかも知れない

だから俺はあの発作が辛かったけど

どこかで安堵していたんだ…」

兄は僕の手を握った

「でも親父に逢いに行って俺は

あいつを許しかけた途端

心の鍵が外れかけてしまった

止めなきゃとどんなに足掻いても

止まらない身体の渇望…お前への

渇望…もう…タイムリミットは

とっくに越えてるのに…俺はまだ

お前に甘えていた…お前が俺を

まだ求めていることが辛くて

…愛しくて

俺は狂ったように…お前を抱いた

…俺のしてることはあまりにも

裏腹で…俺は自分のしてることに

寒気がした…」

僕は肩を震わせて泣き続けていた