僕は今まで気付かなかった自分が

信じられなかった

「隠してたの!?」

「明るい場所で裸にならないし…」

「…ひどすぎる…こんな…なんで

今まで隠してたの?」

僕は座りこんだまま兄の足を握った

「でもこれだけじゃない…腰から下

も…」

僕は耳を塞ぎたくなった



兄は変わることなく静かに話した

「この部屋全部が俺を罰する処刑場

なんだ」

もう聞きたくない

辛くて受け止め切れない

僕は自分の弱さに歯ぎしりをした

「罪の分だけ焼き印が当てられる」

「罪なんかない!」

僕は兄の言葉が終わらぬうちに

そう叫んでいた

「本当はそうかも知れない…でも罪

はなくても人は傷つく…その傷で死

んでしまいたいほど…それに報う術

がない」

「報うことなんかない!兄貴は人を

本当に傷つけたのかよ?…全部自分

のせいにして!…全部勝手な大人の

都合だろ?…なんで兄貴だけが背負

うんだ…みんなに責任があるじゃな

いか!」

僕は声を荒げて兄に抗議した

だが兄は認めなかった



「お前を巻きこんだ…お前が何度そ

れを否定しても俺はこの罪だけは自

分を赦すことが出来ない…お前が俺

を愛すれば愛するほどその罪の深さ

が俺に迫ってくるんだ…俺はお前を

人生の始めからうち壊した…憎んだ

はずの俺の父親と…同じことをした

ずっとずっとずっと!…いつやめら

れるのか…いつお前を手放せるのか

…毎日毎日自分に問いかけて責めて

きた…ずっとだ…お前を愛してから

…俺の弱さがそうさせるなら俺自身

がここに居ることが間違ってる…わ

かって欲しい…お前に今まで言えな

かった…それが一番卑怯なんだ…お

前は俺がいない方が幸せになれる…

お前はノーマルだ…親父の血を引い

てない…俺とは違う…俺にはわかる

…お前は…お前は」

兄は言葉を切った



「お前は…ゲイじゃない」



それはあまりに悲しくて

消えてしまうかのように

僕には聞こえた

「普通に…女の子と恋愛して普通に

…結婚出来る…お前はまだやり直せ

るんだよ…」