「暇なのか、お前」
嘆息ひとつ。
実験で使った教材を片す手を止めて、呆れたように振り返る先生。
「べつに、暇じゃないですよ。受験生ですもん」
お行儀悪く、机の上に座って脚をぶらぶらさせて答える私。
「…嘘つけ、志望校推薦の余裕者が」
返ってきた先生の言葉に思わず苦笑い。
「よく知ってますね」
「……お前のことだからな」
それは、期待してもいいんですか。
こうやって先生は時折、至極思わせぶりなことを言ってくる。
まるで、試されているかのよう。
私の気持ちは知っている筈なのに。
『先生が好き』
あの告白はどこに消えたのかな。
こうして、先生の元に足繁く通っていても拒まれはしないけれど。
私と同じ気持ちは返してくれていない。
『……そうか、』
たった、それだけの返事。
受け止めてくれた訳じゃない。
けれど、突き放された訳でもない。
ただ、先生が私の気持ちを知っただけ。