大学院までエスカレーターできるこの学校だけど、中等科最後の年には修学旅行が設けられている。というのも、高等科以降は学費がかかるため、全員がそのまま進むとは限らないからだ。

 お金があっても就職したり軍に入ったりする人もいるし、他の学校を受験する人もいる。進学するに当たって教師が一新するのも理由の1つということになる。

 通路から車輪の転がる音がして、「機内販売でーす」というキャビンアテンダントのお姉さんの声が聞こえてくる。

「ねえ、峻」

 今にも寝そうな虚ろな声で、透が呟く。

「これ終わったら、いい加減身を落ち着ける場所を見つけないとね」

「……ああ」

 俺と透がスイスに来て、3年が経とうとしている。

 父さん達からもらったお金で、なんとかこの学校の寮に転がり込んだのは良かったけど、その後は何も決まっていない。

 はあ、と俺は小さく、だけど深くため息を吐いた。